木村智彦/グラムデザインによる、鳥取県東伯郡の「田後のアトリエ住居」。

クライントはガラス作家と鞄職人の夫婦、共に緻密且つ繊細、独特な世界観の作品を創る作家である。 永住の地を何処に構えるか思案していた夫婦であるが、夫の父が東京から鳥取に帰省したという縁もあり、鳥取中部の長閑な環境も気に入り、この場所に家を考えるに至った。 1年半前に設計を依頼したいという連絡をいただいてからのお付き合いとなる。 竣工を間近に控える今更ながら、私に設計を依頼した理由を聞いてみた。 外観のシンプルなシルエットでつくられたそれまでの設計も好ましく感じたこと、細部までこだわりもあり、安心して設計を頼めそうに思えたという。 作家であるクライアント夫婦にとって、ギャラリーのような住宅だとも感じており、住まいとして、仕事場として、この住宅の引き渡しを楽しみに、喜ばしく感じているという話も伺えた。

大きな屋根の下に最大限に床をつくる。
切妻の大屋根、軒の跳ね出しは1.5Mと大きくとり、軒下土間天端より軒天下端を2.1Mと低く抑えている。 開口部の上端より低く垂れ下がる屋根は、物理的な機能として雨と日差しを遮るが、外皮として機能する外壁面より、住まい手の領域を大きく確定してくれているようにも感じる。 小さな庇と比べ大きな屋根は、住まい手にとって大きな安心感をもたらすように感じるのだ。 しかし屋根を大きく取ることで、建築の実質施工面積は大きくなる。 限られた予算の中、最大限に床を確保することに専念した。

素材、高さ、構成について。
外装は鳥取県産材の杉板。 ポーチを杉板本実加工の竪張りとしているが、基本は杉板下見板張り。 内装も1階床のみをフローリングなどとしているが、2階の床、壁、天井については、シナ合板の素地としている。 1階基本天井高さを2,200mm、そこから水平方向のシナ合板を割り付けし、外部のサッシと下見板張りの取り合いも全て計算し尽くし設計を行った。 天井、床についても同様である。 内部建具について基本的に引込み戸とし、戸袋におさまった際には、存在を感じさせないおさまりに。 シナ合板の内装であるため、緻密な寸法監理を行うことで、枠を付けないおさまりが可能となり、視覚的なエレメントを最小限に抑え、小さな気積の区切られたスペースでも、圧迫感を感じさせない設えとしている。

中央2間(柱間3.64M)分の居間となるスペースには、南北に両開きの木製引戸としているが、木製建具の框内法(ガラス面)を木枠の内法に合わせることで、最低限の見掛りに抑え、抜けのある空間を強調した。 天井高を低く抑えた室とは対象に、大きな気積でつくることで小さなスペースに対し求心力を持たせたいとも考えた。 抜けと求心力を持つ居間を挟む格好で、その他小さな室を配置する。 とてもシンプルなプランの住宅である。

生まれたばかりの建築。
今、この建築を“素”の状態であるように感じる。 何故なら設計者である私が、アイコン的なイエらしい家のカタチを求め、素直なカタチ、簡素な素材でつくり、仕上げも粗方素地で終わっている。 庭にもまだ土があるだけだ。 クライアントは夫婦で作家である。 つくる人だ。 職住一体の住まいを羨ましくも感じ、これからの長い時間を掛け、この建築が育まれていく姿を楽しみに感じている。

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田後のアトリエ住居 図面PDFデータ

■建築概要
所在地:鳥取県東伯郡
構造/規模:木造/2階建て
用途:住宅+アトリエ
建築面積:115.09㎡
1階面積: 99.37㎡
2階面積: 64.96㎡
延床面積:164.33㎡
設計期間:2020年10月~2021年10月
竣工:2022年4月
設計者:木村智彦/グラムデザイン一級建築士事務所
施工:株式会社 辻工務店
Web:http://gramdesign.biz/